Digger(ディガー)/Crate Digger(クレイト・ディガー/クレート・ディガー)とは – 音楽用語
ディガーとは ~ 音楽用語
Digger、Record Digger、Crate Digger、Vinyl Digger
元々はヒップホップ用語で、レコード店をまわり、DJプレイやサンプリングのネタを求めて古いレコード漁りをする人のこと。レコード・ディガー、ヴァイナル・ディガー。音源堀り。単純にディガーと呼ぶことが多い。日本では音源を探す事を「ディグる」「ディグする」と表現することも。
Crate(=バスケット)+ Digger(=掘る人、発掘する人)
つまり、バスケットに放り込まれて人が見向きもしないようなジャンク品扱いのレコードから、有用な音源を探す人のこと。マニアックなレコードコレクターのこと。
Urban Dictionary – Cratedigger
Urban Dictionary – Crate Digging
uDiscover Music:DJ Shadow’s ‘Endtroducing’ Explained
DJ Shadowの『Endtroducing』を聴けば、これはサンプリングがスピリチュアルな実践としてアプローチされ一人の男の生涯にわたるヒップホップへの敬愛とレコードミュージックの歴史との関わりを聴覚的に記録したものである、という事が分かります。…(中略)… おそらくBeastie Boysの『Paul’s Boutique』はこのサンプリングソースの数に匹敵しますが、『Endtroducing』以前にはこれほど音の広がりのあるものは存在しませんでした。
Crate-Digging with DJ Shadow
Gilles Peterson Goes Crate-Digging in Havana (字幕機能を日本語へ)
アーティスト
海外のディガーは実際、挙げればキリがありません。John Peel(ジョン・ピール)※7万枚 やGilles Peterson(ジャイルス・ピーターソン)※3万枚 のようなBBCの大物DJは、当然のごとく全員がレコード・コレクター/ディガーです。アーティストでは DJ Shadow の6万枚、DJ Questloveの5万枚が知りうる中では巨大です。
有名どころのアーティストでは、J Dilla(ジェイ・ディラ)、DJ Jazzy Jeff (DJジャジー・ジェフ)、 Madlib(マッドリブ)、Dimitri From Paris(ディミトリ・フロム・パリ)、 Mark Ronson(マーク・ロンソン:Uptown Funk ft. Bruno Mars)、Four Tet(フォー・テット)、Midland(ミッドランド)、Caribou(カリブー)、Joey Negro(ジョーイ・ネグロ)、Ed Motta(エヂ・モッタ)、DJ Questlove(DJクエストラブ:ザ・ルーツ)、Cut Chemist(カット・ケミスト:ジュラシック5)、Peanut Butter Wolf(ピーナッツ・バター・ウルフ)、DJ Shadow(DJシャドウ)などが挙げられます。
ディガーはレコードコレクターと似て非なるもの
著名なレコードコレクターの所有枚数は100万枚単位ですが、ディガーとしての観点からは活用のされ方が重要であって枚数や購買力を競い合うものではないのでここでは比較は避けます。
「ちゃんと、というか全然聴いてないだろw」とツッコミたくなる世界的レコードコレクター、ブラジルの実業家 Zero Freitasの倉庫。(踏んじゃってるしw)
選曲例
The Longest Mixtape – 1000 Songs For You [2015]
2015年にCaribou(カリブー)がYouTube上で公開し音楽ファンを騒然とさせた全1000曲の巨大なプレイリスト。
全曲リスト(PDF14頁) Caribou – The Longest Mixtape – 1000 Songs For You
LOVEFINGERS : Fingertracks
LOVEFINGERS – Fingertracks
LOVEFINGERS : Fingertracks 871曲 Playlsit
活用例
グロリア・アン・テイラー Love is a hurting thing
2000年代初頭にクレート・ディガーによって発掘され、ディープファンク・シーンを一変させた名曲。正式に再発行されるまでの間、ヴァイナルコピーがeBayで1,500ドル以上になった事もありました。
Pitchfork:Love Is a Hurtin’ Thing リイシュー盤 [2015]
Gloria Ann Taylor – Love is a hurting thing [1973]米 Funk/Soul/Disco
Lack of Afro – Where It’s At [2007]英
U.S. Girls – Window Shades [2015]加
アロンゾ・ターナー Whoever Said It
38歳で他界したAlonzo Turnerが1978年に唯一リリース、シカゴのRahaan(ラハーン)やSadar Bahar(サダー・バハー)をはじめ世界中のダンスフロアでプレイされてきた激レア・ディスコ。
Alonzo Turner – Whoever Said It [1978]米 Disco
Joy Anonymous – JOY (Love’s Not Real) [2022.3]英(豪)
ラタ・ラマサール The Greatest Name That Lives
日本のDisk Union(ディスクユニオン)でも激レア盤に挙げられている(オリジナルは1000ユーロ)、トリニダード・トバゴのインド人コミュニティから生まれたインド少女のレコード、Lata Ramasar(ラタ・ラマサール/ラマザー)「The Greatest Name That Lives」を応用したCaribou(カリブー)の曲。数学者でもあり博学なカリブーらしい音楽資産の再利用法です。(2016年に再発)
Lata Ramasar – The Greatest Name That Lives [1980](激レア盤)インド/トリニダード・トバゴ共和国
2015.7.23 BBC Radio 1:Four Tet with Caribou, Floating Points
CARIBOU – Mars [2014]カナダ
ローレン・ラヴァリス Love Don’t Change
オリジナル盤は1000ドル近くで取引された事もあるという、デトロイトの16歳のシンガー Laurene LaVallis によるスウィート・ソウルのメガ・レア盤! 2021年3月、奇跡のリイシュー!! 2021年BBC Radio 1 オンエア曲。
Laurene LaVallis – Love Don’t Change [1984/2021]米 Soul
B面)Key to Our Love
Taxie – Rock Don’t Stop [1979/2015/2021]米
1979年オークランドのソウルグループ Taxie(タキシー)による激レア盤ソウル。2015年にはFloating Points主宰のリイシュー専門レーベルMelodies Internationalから、2021年にはEpsilon Recordから復刻再発。
Blazers – Side2Side [2018]仏
Steve Monite – Only You [1984/2017]ナイジェリア
2017年にリイシューされた1984年ナイジェリアン・シンガー Steve Monite(スティーブ・モニート)のアフロ・ブギー。再発リリース年にはフランク・オーシャンがライブでカバー、翌年にはセオフィラス・ロンドン&テーム・インパラのコラボでカバーされました。
Frank Ocean – Only You [2017]米
Theophilus London – Only You feat. Tame Impala [2018]米/豪
服部克久 – 江戸の旋風(えどのかぜ)
2020年6月に亡くなった作曲家、服部克久(はっとり・かつひさ)による、Blaxploitation(ブラックスプロイテーション)の影響を色濃く受けたジャズ・ファンク名作。世界中のディガーの垂涎の的となった東宝/フジテレビの時代劇シリーズ『同心部屋御用帳 江戸の旋風』のサウンドトラック。
Hattori Katsuhisa – 江戸の旋風 (Edo no Kaze) [1977]日本
East of Underground – I Love You For All Seasons
ベトナム戦争下でアメリカ陸軍の兵士によって結成されアーミーバンドとして活動したEast Of Undergroundがフランクフルトのスタジオにて録音したウルトラレアな軍用プロモーションLPに収録されたThe Fuzz「I Love You for All Seasons」のカバー曲。アトランタ出身の若手ラッパー、21 Savage(トゥエンティワン・サヴェージ)のヒット曲に使われました。
East of Underground – I Love You For All Seasons [1971]米
The Fuzz – I Love You for All Seasons [1970]米
21 Savage – A Lot (ft. J. Cole) [2018]米
ヒース・ブラザーズ Smiling Billy Suite Pt.2
Strata-Eastからリリースされたスピリチュアル・ジャズのアルバム「Marchin’ On!」の収録曲。Nasの「One Love」でサンプリングされ再プレスされるまで激レア盤として高値のついていた曲です。
Heath Brothers – Smiling Billy Suite Pt.2 [1976]米 Jazz
Nas – One Love [1994]米 HipHop
参考
YouTubeの「Crate Digger」シリーズでは、主要なディガー・アーティストが閲覧できます。
「The Vinyl Factory」のCrate Diggers特集でも、DJやミュージシャンのレコード収集の様子が分かります。
The Vinyl Factory – Crate Diggers
この「再利用できる音楽資産」の層の厚さこそが、洋楽と邦楽のイノベーション・パワーのクリティカルな違いだということが良く分かります。90年代に飛躍をみせた邦楽が、その後失速した原因の一つかもしれませんね。(音楽文化圏での孤立や芸能重視の音楽界、放送メディアによる鎖国的状況など理由は山ほどありますが)
サンプリングを使用した電子音楽は、どうしても旧態依然のロッキストから軽んじられ易い傾向にありますが、膨大な音源からネタを探して再構成する(湯舟に浸かって鼻歌を思いつくよりも膨大な)苦労を知れば、レコード・ディギング自体が音楽制作の重要なプロセスであることが分かります。
海外
世界の驚くべきレコードコレクション | Music – Red Bull
Discogs – Kon(King Of Nothing) ディスコグラフィー
Motor City Drum Ensemble – RA / TOKYO SCENE NEWS / XLR8R
日本
- Muro – RA / DJ Muro
- 橋本徹(SUBURBIA) / フリー・ソウル – UNIVERSAL MUSIC JAPAN
- 小西康陽(ピチカート・ファイヴ)
- YOSUKE BAOBAB / YOSUKE BAOBAB – Soul Bonanza
- D.L(DEV LARGE) a.k.a. BOBO JAMES(BUDDHA BRAND)故人
- 家永直樹(ダブストア・レコーズ)
- 尾川雄介(universounds) / twitter
- Illicit Tsuboi(キエるマキュウ)
- MACKA-CHIN(Nitro Microphone Underground) / Soundcloud
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