Anthem(アンセム)とは Part 2 – 音楽用語
意味
元々の意味は聖公会の教会音楽の一種、聖歌、交唱賛美歌、国歌のこと。
特定の集団や行事の象徴としての賛歌、応援歌、祝いの歌、祝曲、テーマ曲。
例として、CL(Champions League)アンセム、公式アンセムなど。
転じて、ある音楽ジャンルや音楽ムーブメント、サブカルチャー等のシンボルとみなされる代表曲のこと。さらに意味を弱めて(支持者の多い)定番曲、名曲のこと。
※ Banger(バンガー)と異なり、名曲であっても認知されていない場合には適用されない。新曲プロモのキャッチコピーとして使うのは本来マナー違反だが、実際には濫用されている。 例:2022年のサマーアンセム登場!… など「本命馬/真打ち」の意味合いで。
※ 多くの支持が固まるまで一定期間を要する場合も多く、逆に商業的に成功したヒット曲でもアンセムとみなされるとは限らない。
過去の音源を聴き込む余裕がないほど旧譜の蓄積が進んでしまった2000年代以降は、目立った曲をアンセムとして管理することで音楽シーンを把握することが多い。例として、2018年アンセム、サマーアンセム、ダンスアンセムなど。
アンセムという用語の定着は、アルバム単位でじっくり聴き込む「名盤」ではなくシングル単位の「名曲」を基準として、ダウンロード購入やサブスクリプションで音楽収集し、個人でプレイリストの作成を楽しむ時代を反映している。
それと同時にアルバム内の隠れた名曲やヒット曲以外の名曲を探す=ディグするという逆の音楽収集方法にも価値が見出されている。
類似の用語: Banger(バンガー)、Killer Tune(キラー・チューン)、Massive Hit(マッシヴ・ヒット)
用例
- National Anthem(ナショナル・アンセム=国歌)
- Hippie Anthem(ヒッピー・アンセム)
- Mod Anthem(モッズ・アンセム)
- Rock Anthem(ロック・アンセム)
- Glam Anthem(グラムロック・アンセム/グラム・アンセム)
- Punk Anthem(パンク・アンセム)
- Dance Anthem(ダンス・アンセム)
- Disco Anthem(ディスコ・アンセム)
- Dance Classic Anthem(ダンスクラシック・アンセム)
- Feminist Anthem(フェミニスト・アンセム)
- Gay Anthem(ゲイディスコ・アンセム/ゲイ・アンセム)
- Hi-NRG Anthem(ハイエナジー・アンセム)
- New Wave Anthem(ニューウェイヴ・アンセム)
- House Anthem(ハウス・アンセム)
- Techno Anthem(テクノ・アンセム)
- House Anthem(アシッドハウス・アンセム)
- Grunge Anthem(グランジロック・アンセム/グランジ・アンセム)
- Hip Hop Anthem(ヒップホップ・アンセム)
- Rave Anthem(レイブ・アンセム)
- Club Anthem(クラブ・アンセム)
- Indie Rock Anthem(インディーロック・アンセム)
- Emo Anthem(エモ・アンセム)
- UK Garage Anthem(UKガラージ・アンセム)
- Nu Disco Anthem(ニューディスコ・アンセム)
- Ibiza Anthem(イビザ・アンセム)
- EDM Anthem(EDMアンセム)
代表曲
The Greatest Indie Anthem Ever revealed – NME
The Prodigy – Charly [1991]
ちょっと下品なくらいのハードコア・テクノやトランス・ミュージック等でドラッグを使用して盛り上がる英国発の野外クラブイベント Rave(レイブ)のアンセム、レイブ・アンセムです。音楽的にはかなり幅があり、複数のジャンルから多くのアンセムが挙がります。
Underworld – Born Slippy .NUXX [1995]
特定ジャンルに押し込めて語るのは難しいのですが、あえて言うなら明らかに90年代のクラブ・アンセムです。(この曲はレイブ・アンセムやイビザ・アンセムでもあります。)
Oasis – Don’t Look Back In Anger [1996]
イギリスの国歌とまで言われたインディーロック・アンセム。マンチェスターで発生したアリアナ・グランデのコンサート会場における自爆テロ事件でも追悼アンセムとして歌われました。
インディーロックとは元々、Independent Label(インディペンデント・レーベル)からリリースされるマイナーなロックを指していましたが、現在ではメジャーレーベルからデビューするロックバンドも含まれ「インディーロック・サウンド」のテイストを持つ楽曲すべてを指しています。その多くがBritpop(ブリットポップ)ムーブメントとかぶります。
NME読者が選んだ、偉大なる永遠のインディ・アンセム 1〜20位
Stone RosesとNirvanaに続くオルタナ/インディー・ブームを受け入れたかどうかが、旧世代と新世代を分け隔ててしまうほどその後の日本人の洋楽ロック観に大きなジェネレーションギャップを生みました。
The Stone Roses – Waterfall [1988]英
演奏を求められるとトム・ヨークがへそを曲げてしまう名曲「クリープ」、BBCでの最多オンエアはこの曲と「No Surprises」。ノエル・ギャラガー曰く「最終的にみんなが聴きたいのは“Creep”なんだよ。いい加減にあきらめろよ。」
Radiohead – Creep [1992]英
Beck – Loser [1993]米
Weezer – Buddy Holly [1994]米
Blur – Song 2 [1997]英
The Strokes – Last Nite [2001]米
Arctic Monkeys – Mardy Bum [2005]英
Pitchfork:The 10 Best Britpop Albums
My Chemical Romance – Welcome To The Black Parade [2006]
ハードコア・パンクに属するエモーショナル・ハードコア(エモコア)にルーツを持ち、エモパンク~メロコア(メロディックパンク)、ポップパンク、パワーポップ、メタルコア、ゴシックメタル、ミクスチャーまでひっくるめて、現代の視点から総合的に「広義のEmo(エモ)」としてコンパイルされる、とびきりキャッチーでエモーショナルなティーンエイジャー向けの楽曲群から、BBC Radio 1 の鉄板 Emo Anthem(エモ・アンセム)x3。
Linkin Park – In The End [2000/2001]
Evanescence – Bring Me To Life [2003]
エモ・アンセム 60選
Roy Davis Jr ft. Peven Everett – Gabriel [1996]米
リリース当時にはまだ存在していなかったジャンル、UKガラージのアンセムです。米国シカゴでハウスミュージックとして制作され、後に英国で2 Step(ツーステップ)/UKGの基盤となった曲として、英国BBC Radioが選ぶ「ダンスミュージックを形作った過去30年史上の重要曲」にも選出されています。最頻出UKガラージヒット「Flowers」と合わせて。
Sweet Female Attitude – Flowers [1999]英
Stardust – Music Sounds Better With You [1997]仏
画像はDaft Punk(ダフト・パンク)のThomas Bangalter(トーマ・バンガルテル)が1997年に手掛けたフレンチ・ハウス。当時はNu Disco(ニューディスコ)という言葉すら存在していませんでしたが、現在はニューディスコ・アンセムとされる曲です。もちろんフレンチハウス・アンセムと呼んでも構いません。
Stardust – Music Sounds Better With You [1997]仏
Modjo – Lady (Hear Me Tonight) [2000]仏
Moloko – Sing It Back [1998]英
「時計じかけのオレンジ」に登場する麻薬入りミルクから命名したエレクトロポップ/ダンスポップ・デュオ、モロコによるイビザ・アンセム。クラバーの聖地、スペインのイビザ島のクラブカルチャーを代表する曲です。
Nightcrawlers – Push The Feeling On (Prod. by MK) [1992]英
Kenny “Dope” Presents The Bucketheads – The Bomb! [1994]米
David Morales – Needin’ U [1998]米
EDMアンセム
有名曲の数が多くキリがないため、初期のEDMアンセムを中心にいくつか挙げます。 EDMアーティストはヒット曲の次作あたりに人気が高まるため、YouTubeの視聴回数だけで判断するとアンセムを見誤ってしまう点に注意が必要です。(リアルタイムでなく少し間をおいてから評価が定まる事が多いです。流行後もヘビーにプレイ/オンエアされるような曲が本物のアンセム)
SPIN : The 100 Greatest EDM Anthems of the ’10s
Skrillex – Scary Monsters And Nice Sprites [2010]
Avicii – Levels [2011]
サンプリング:Etta James – Something’s Got A Hold On Me [1962]
Otto Knows – Million Voices [2011]
LMFAO – Party Rock Anthem ft. Lauren Bennett, GoonRock [2011]
David Guetta feat. Sia – Titanium [2011]
David Guetta – Titanium feat. Sia | The Making Of An EDM Anthem
Nicky Romero – Toulouse [2011]
Porter Robinson – Language [2012]
Nicki Minaj – Starships [2012]
Baauer – Harlem Shake [2012]
Swedish House Mafia – Don’t You Worry Child ft. John Martin [2012]
Avicii vs Nicky Romero – I Could Be The One (Nicktim) [2012]
Showtek ft. We Are Loud & Sonny Wilson – Booyah [2013]
Martin Garrix – Animals [2013]
DVBBS & Borgeous – TSUNAMI [2013]
DJ Snake, Lil Jon – Turn Down for What [2013]
Disclosure – You & Me feat. Eliza Doolittle (Flume Remix) [2013]
Zedd – Clarity ft. Foxes [2013]
Armin van Buuren feat. Trevor Guthrie – This Is What It Feels Like [2013]
Lana Del Rey vs Cedric Gervais – Summertime Sadness (Remix) [2013]
Vicetone & Tony Igy – Astronomia [2010/2020]
2020年Tik Tok発のインターネットミームになってしまったガーナ共和国「棺桶ダンス」の原曲、2010年ロシアのTony Igy(トニー・イギー)によるEDMソング「Astronomia(アストロノミア)」です。BBC Radio 1もこの勢いを無視できず、ついにリアルなダンスアンセムに入れてしまいました。
Ariana Grande – Break Free ft. Zedd [2014]
Dimitri Vegas, Martin Garrix, Like Mike – Tremor [2014]
Calvin Harris – Summer [2014]
Tiësto – Wasted ft. Matthew Koma [2014]
Alesso – Heroes (We Could Be) ft. Tove Lo [2014]
Dillon Francis, DJ Snake – Get Low [2014]
Steerner, Martell & William Ekh – Sparks (ft.Corey Saxon) [2015]
アジア~日本国内ウケのアンセム!
Major Lazer & DJ Snake – Lean On feat. MØ [2015]
Dillon Francis, Skrillex – Bun Up the Dance [2015]
Kygo – Firestone ft. Conrad Sewell [2015]
Alan Walker – Faded [2015]
Diplo & Sleepy Tom – Be Right There [2015]
Mike Posner – I Took A Pill In Ibiza (SeeB Remix) [2015/2016]
The Chainsmokers – Closer ft. Halsey [2016]
Martin Garrix & Bebe Rexha – In The Name Of Love [2016]
Martin Garrix & Dua Lipa – Scared To Be Lonely [2017]
Marshmello ft. Bastille – Happier [2018]