Ground Beat(グランドビート/グラウンドビート)とは – 音楽用語

公開日:  最終更新日:2024/10/04

1974年のファンク、The Soul Searchers(ソウル・サーチャーズ)の「Ashley’s Roachclip」に含まれるドラミングを元に、ヒップホップにおいてブレイクビーツとして使われ、1989年Soul II Soul(ソウル・トゥ・ソウル)のヒットをきっかけに大流行した「グランド・ビート」の紹介です。

元Plastics(プラスチックス)の中西俊夫 率いるMelon(メロン)のUKヒット「Serious Japanese(シリアス・ジャパニーズ)」で打ち込みを担当した元MUTE BEAT(ミュート・ビート)のドラマー 屋敷豪太が、Soul II Soul(ソウル・トゥ・ソウル)の打ち込みを担当する際にGo-Go(ゴーゴー)のビートを再構築、(日本固有の呼称として)「グランドビート」と命名されたリズムトラックは80年代後半から90年代前半にかけてブームとなりました。

 

Go-Go Funk(ゴーゴー・ファンク)

70年代半ばに首都ワシントンD.C.で誕生した、特有のビートを使用するFunk(ファンク)のサブジャンルです。Ground Beat(グランド・ビート)の源流として、またHip Hop(ヒップホップ)やNew Jack Swing(ニュー・ジャック・スウィング)に影響を与えたジャンルとして知られています。

アメリカでは単にGo-Go(ゴーゴー)、もしくはWashington Go Go(ワシントン・ゴーゴー)と呼ばれますが、日本では60年代にGo Go(ゴーゴー)ダンスを生んだ西海岸サンセット・ストリップの名門ロック・クラブ、Whisky A Go-Go(ウィスキー・ア・ゴーゴー)との混同を避けるためにGo-Go Funk(ゴーゴー・ファンク)といった呼ばれ方をします。

ソウル・サーチャーズ – Ashley’s Roachclip

「The Godfather of Go-Go」と称されるChuck Brown(チャック・ブラウン)率いるThe Soul Searchers(ソウル・サーチャーズ)が生み出した、Go-Go Funk誕生前夜の有名曲。3:30~の間奏部が定番ブレイクとしてあらゆる楽曲で採用されました。同じく定番ブレイクとして有名な「Impeach The President(略称:インピーチ)」の発展形と言えるビートです。

 

The Soul Searchers – Ashley’s Roachclip [1974]米 Funk

余談ですがにローチクリップとは短くなったマリファナのジョイントを掴む片脚の長いクリップの事。

参考)The Honey Drippers ‎– Impeach The President [1973]米 NY Funk

参考)Aerosmith – Walk This Way [1976]米 Rock

参考)Pornhub Intro

 

Trouble Funk – Drop The Bomb [1982]米 Go-Go

Chuck Brown & The Soul Seaechers – We Need Some Money [1984]米 Go-Go

どちらかと言えばNew Jack Swing(ニュー・ジャック・スウィング)への影響が大きいTrouble Funkの代表曲「Pump Me Up」。

Trouble Funk – Pump Me Up [1982]米 Washington D.C. Go-Go

Hip Hop参考)Grandmaster Flash & The Furious Five – Pump Me Up [1985]米

New Jack Swing参考)Guy – Teddy’s Jam (prod. by Teddy Riley) [1988]米

Hip Hop参考)Will Smith ft. DJ Jazzy Jeff – Pump Me Up [1999]米

 

Ground Beat(グランド・ビート)

1989年のSoul II Soulの流行以降、日本だけで普及した「グランドビート」という名称ですが、現在では原曲サンプリングを使用した曲も、打ち込みでリズムトラックを新たに制作した曲も、共にグランドビートとして扱われており、UK~欧州の楽曲に多くみられます。

同じく源流がGo-Go FunkであるNew Jack Swing(ニュー・ジャック・スウィング)系のスローナンバーにも似通ったビートが同時期のUSの楽曲に多く使われており、インピーチ系のビートも含めて混合でプレイされる事が多いのが実情です。(ここでは大部分を割愛)

つまりグランドビートMixとしてフロアでプレイされるビートパターンは、大まかに分けて以下の3系統を含んでいます。

  • UKグランドビート系(Ashley’s Roachclip 直系)
  • インピーチ系(Impeach The President 直系)
  • ニュージャックスウィング系(Go-Go 進化系)

これらに加えて、

  • ダウンテンポのUKソウル系(Acid Jazz系統)

等もミックスされ、ビートパターンは若干異なるものの、これらをひっくるめた総称としてグランドビートという名称が使われています。

このように英米問わずテイストの似たダウンテンポ曲をコンパイルできる曖昧さ/便利さこそが、「グランドビート」というテーマでパーティを開催できるほど日本に定着した理由のひとつでもあります。

 

Eric B. & Rakim – Paid In Full [1987]米 Hip Hop

ソウル・サーチャーズの原曲をブレイクビーツとして初めて採用したHip Hopの名作! 英国のColdcut(コールドカット)によるリミックス版が有名です。

LL COOL J – Jack The Ripper [1988]米

LLクールJによる、同じくソウル・サーチャーズ使いの曲。

Milli Vanilli – Girl You Know It’s True [1988]独

ソウル・サーチャーズのブレイクビーツを使ったダンスポップ・ヒット! 実際にはドイツのディスコバンド Boney M.(ボニーM)のプロデューサーFrank Farianが仕掛けたプロデュースチームの作品でMVのイケメン黒人2名は口パクと暴露され騒動になりました。

Soul II Soul – Back To Life [1989]英
Soul II Soul – Keep On Movin’ [1989]英

Dub(ダブ)畑の出身でワシントンD.C.のGo-Go Funk(ゴーゴー・ファンク)にも詳しかった屋敷豪太が楽譜も読めなかったメンバーに代わって打ち込み(=実質大部分の制作)を裏方として担当し、前述のブレイクビーツをベースにGo-Go(ゴーゴー)のビートを再構築、グランド・ビートを誕生させ多方面に影響を与えた歴史的名作!

Sybil – Don’t Make Me Over [1989]米

Lisa Stansfield – All Around the World [1989]英

J.T. And The Big Family – Moments In Soul [1989]伊

トレヴァー・ホーン率いるArt Of Noise(アート・オブ・ノイズ)の傑作「Moments In Love」をイタリアンプロジェクトがグランドビート化。

Ruby Turner – It’s Gonna Be Alright [1989]英

The Chimes – 1-2-3 [1989]英

Acid House(アシッド・ハウス)黎明期のヒット曲。ドラミングパターンは異なりますが根っこは同じUKソウルのダウンテンポ・ナンバー。

Inner City – Whacha Gonna Do With My Lovin’ [1989]米

ドラミングパターンは若干異なりますがグランドビートMixに適応する、どちらかといえばAcid Jazzっぽいダウンテンポのヒット曲! デトロイトテクノ出身のKevin Saunderson(ケヴィン・サンダーソン)より。原曲は1979年ステファニー・ミルズのディスコヒット。

Stephanie Mills – What Cha Gonna Do with My Lovin’ を表示

 

EMF – Unbelievable [1990]英

マンチェスター/マッドチェスター・ムーブメントの影響下にあるオルタナ/インディー・ロックバンドのヒット曲!

DNA feat. Suzanne Vega – Tom’s Diner [1990]英/米

1987年スザンヌ・ヴェガのアカペラ・ヒットをリメイク。グランドビートと聞いて多くの人が連想するのはSoul II Soulに次いでこの曲とリサ・スタンスフィールドの「All Around the World」ではないでしょうか。

DNA feat. Suzanne Vega – Tom’s Diner 原曲を表示

 

Lio ‎– The Girl From Ipanema [1990]ベルギー

アントニオ・カルロス・ジョビンのボサノバ名曲「イパネマの娘」をリメイク!

The Girl from Ipanema 屋敷豪太リミックス を表示

 

Oscare – What’s Going On [1990]蘭

1971年マーヴィン・ゲイの名曲カバー!

Oscare – What’s Going On 原曲を表示

 

Caron Wheeler – Livin’ In The Light [1990]英

Maxi Priest – Close To You [1990]英

UKレゲエからもラヴァーズ・ロック歌手、マキシ・プリーストが参戦!

Enigma ‎– Sadeness Part I [1990]独

グレゴリオ聖歌をグランドビートに落とし込んだ有名曲!

Suzi Kim – Try Me (prod. by Monchi Tanaka) [1991]日本

日本のレジェンダリーDJ/プロデューサー/スクラッチマスター、モンチ田中がイェール大学音楽科出身のヴォーカリスト Suzi Kim(スージー・キム)をプロデュースした和製グランドビートの名作! ジャケ写は平間至。New Jack Swing全盛期に米黒人兵がランニングマン等のダンスを披露していた伝説の「横浜Circus」をはじめ国内のR&B系クラブでヘビープレイ。

Executive Sounds Project feat. Melodie Sexton‎- White Christmas [1991]日本
Suzi Kim – A Winter Love Song (prod. by Monchi Tanaka) [1999]日本

同じくモンチ田中プロデュース、1984年Tears For Fearsの「Shout」を混ぜ込んだ和製グランドビートのクリスマスソングと1999年の哀愁グランドビート。

Ryuichi Sakamoto – Merry Christmas Mr Lawrence (Remix) [1991]日本

Saint Etienne – Only Love Can Break Your Heart [1991]英

1970年Neil Young (ニール・ヤング)のグランドビート・カバー。

Only Love Can Break Your Heart 原曲を表示

 

Shanice – I Love Your Smile [1991]米

PM Dawn – Set Adrift On Memory Bliss [1991]米

1983年Spandau Ballet(スパンダー・バレエ)の大ヒット「True」ネタ。

Jon Ice – Theme From Antartica (Vangelis)(Club Mix) [1991]伊

ヴァンゲリス「南極物語メインテーマ」ネタ!

Jackie Moore – Let Me Try Again [1991]伊

Around The Way – Really Into You [1992]米

グローヴァー・ワシントンJr.&ビル・ウィザースによる鉄板の名曲「Just The Two of Us」ネタのワンヒット・ワンダー! 

Around The Way – Really Into You 原曲を表示

 

SWV – Right Here [1992]米

グランドビートというよりニュー・ジャック・スウィング系のビートを使った大ヒット曲。源流が同じなのでビートが似るのも当然です。

SWV – Right Here 原曲を表示

 

Mary J Blige – Real Love (Remix) [1992]米

Madonna – Erotica [1992]米

Janet Jackson – That’s The Way Love Goes (CJ R&B 12″ Mix) [1993]米

こちらもニュー・ジャック・スウィング系の大ヒット曲。

Jomanda – I Like It [1993]米

1982年DeBarge(デバージ)のオリジナルVer.に劣らぬ名曲と化したインピーチ系ビートのカバー曲!

DeBarge – I Like It [1982] を表示

 

Gabrielle – I Wish [1993]英

DJ Takemura (竹村延和) – Hoping for the Sun [1993]日本

後に和製エレクトロニカの名作『こどもと魔法』を生み出す竹村延和のジャジーな初期作品。

Crystal Waters – Ghetto Day [1994]米

原曲は1968年Laura Nyro(ローラ・ニーロ)の「Stoned Soul Picnic」をオリジナルとするThe 5th Dimensionのカバーバージョン。ピチカート・ファイヴの小西康陽ヘヴィプレイ。

Montell Jordan – This Is How We Do It (Puff Daddy Mix) [1995]米

Deni Hines – I Like The Way [1997]豪

DJ HASEBE – Orange [1998]日本

Dragon AshのKJとのコラボヒット「Garden」でも知られるSugar SoulのDJ HASEBEによるグランドビート。

Elisha La’ Verne – I’m Not Dreaming [1998]英

Delerium – Silence (Original) feat. Sarah Mclachlan [1999]加

Moby – Porcelain [2000]米

Moby – Porcelain 原曲を表示

 

Rose Gray – Save Your Tears [2020]英

Peggy Gou – Nabi (feat. OHHYUK) [2021]独/韓

 

Soul II Soul/グランドビートの影響下にある楽曲

Primal Scream – Loaded [1990]英

ローリング・ストーンズ「悪魔を憐れむ歌」とグランドビートを掛け合わせるとマッドチェスター・サウンドの出来上がり!

The Rolling Stones – Sympathy For The Devil を表示

 

The Brand New Heavies – Never Stop [1991]英

Soul II Soulに次いでアメリカ進出に成功したThe Brand New Heavies(ブラン・ニュー・ヘヴィーズ)によるAcid Jazz(アシッド・ジャズ)永遠の名曲! カーティス・メイフィールドのレーベル Curtom からリリースされた1975年リロイ・ハトソン「All Because of You」へのオマージュソングでもあります。

Leroy Hutson – All Because of You を表示

 

Massive Attack – Teardrop [1998]英

Trip Hop(トリップ・ホップ)Bristol Sound(ブリストル・サウンド)の代表曲!

 

番外編:屋敷豪太ワークス

MELON – Serious Japanese [1985]日本

Plastics(プラスチックス)を解散した中西俊夫が新たに率いたニューウェイヴ・ファンク・バンドMelon(メロン)の曲。実質的に屋敷豪太が打ち込みで大半を制作し海外レーベルと契約、まだ歌謡曲全盛期の日本が生んだ、Malcolm McLaren (with Art of Noise)の「Buffalo Gals」やPaul Hardcastleの「19」にも引けをとらない伝説の海外クラブヒット

Sinéad O’Connor ‎– Nothing Compares 2 U [1990]英

Prince(プリンス)作曲、屋敷豪太が打ち込み(=実質全ての演奏)を担当して世界的大ヒットとなったシニード・オコナーの代表曲!

Seal – Crazy [1990]英

Bomb The Bass – The Air You Breathe [1991]英

Bomb The Bass – Love So True (Depth Charge Remix) [1991]英

Simply Red – Stars [1991]英

Simply Red(シンプリー・レッド)にドラマーとして正式に加入した屋敷豪太が制作に関わり、スローバラード頼みだった同バンドにグルーブを与えた世界的ヒット曲。アルバム『Stars』は2年連続UKチャート1位!

björk – Venus As a Boy (7″ Dream Mix) [1993]

Alanis Morissette – All I Really Want [1995]加

Army Of Lovers – Give My Life [1995]スウェーデン

Swing Out Sister – We Could Make It Happen [1997]英

 

 

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