Nu Disco(ニューディスコ)とは – 音楽ジャンル Part 7
2018年 後編
Mall Grab & Elliot Adamson の2018年ヒット、MOVE
ローファイ・ハウスから誕生したNu Disco(ニュー・ディスコ)ヒット!
Young Romanticという正体不明のアーティストからリリースされたこの曲の実体は、Lo-Fi House(ローファイ・ハウス)の旗手、オーストラリアのMall Grab(モール・グラブ)によるインスト曲「Feel Good House」をベースに英国のElliot Adamson(エリオット・アダムソン)が1984年Carmenの「Time to Move」をミックスしたヴォーカル版ブートレグ「Feel Good House (Elliot Adamson EAcapella)」としてリリースされていた曲から、ローファイ成分(歪み)を抑えて別名で一般向けに再リリースされたものです。90年代後半、Stardust時代の古典的なフィルターディスコのスタイルながら2018年の夏ヒットに。
Young Romantic – MOVE (Time to Get Loose) [2018]
伝説のNYディスコ Studio 54をイメージした曲、Beat 54
ロンドンのネオソウル・バンド/エレクトリックポップ・デュオ、Jungle(ジャングル)による2018年10月リリース曲を「Neutron Dance」のヒットを飛ばしたNYのクリスタル・クリアがリミックス! タイトルロゴを見てピンとくる通り、アンディ・ウォーホル/サルバドール・ダリ/マイケル・ジャクソン/カルバン・クライン/ミック・ジャガー/アーノルド・シュワルツェネッガー/マドンナ/ドナルド・トランプなど世界中のセレブが集ったNYのメガディスコ「Studio 54」全盛期のまばゆいディスコ時代をイメージした曲!
オーナーのスティーブ・ルベル自らが入口に立ち「Velvet Code」と呼ばれる服装チェックを行うなど、日本のマハラジャ等の手本となったディスコでもあります。
Jungle – Beat 54 (Krystal Klear 12″ Mix) [2018/2019]
Studio 54 The Documentary – Official Trailer [2018]
Disclosure ft. Gwen McCrae – Funky Sensation [2018]英
何でも余裕で作ってしまうディスクロージャー兄弟のNu Discoソング!
Disclosure – Funky Sensation 原曲を表示
The S-Men(ジ・エスメン)の実体は90年代初期から「Underground Solution – Luv Dancin’」「Another Chance」等の大ヒットをリリースしてきたRoger Sanchez(ロジャー・サンチェス)、DJ Sneakらディープハウス系の大御所DJ陣!1997年のデビューシングルから20年もの間放置され続けてきたユニットを再始動させ、リリースした2ndシングルです。これぞシカゴハウス~NYガラージの残党オヤジ達のパワー!
The Smen – Who We Are (Jacked Mix) [2018]米
原曲は1979年Keane Brothersの「Dancin’ in the Moonlight」。
Brame & Hamo – Roy Keane [2018]アイルランド
原曲は1978年Melba Moore「You Stepped Into My Life」。
Mella Dee – Donny’s Groove [2018]英
2001年のニューディスコ・アンセム「At Night」のリミックスx2曲です。
Shakedown – At Night (Shakedown’s Galactic Getaway) [2018]スイス
Shakedown – At Night (Peggy Gou’s Acid Journey Remix) [2018]スイス/韓/独
原曲は1970年Honey Cone「Girls It Aint Easy」。
Finn (Finn McCorry) – Sometimes The Going Gets A Little Tough (Mella Dee Going Got A Bit Tougher Mix) [2018]英
Friend Within – The Truth [2018]英
Mercer – Fireworks [2018]仏
原曲は2022年6月22日に亡くなったPatrick Adams(パトリック・アダムス)の別名義Cloud Oneによる1981年の曲!
Mercer ft. Ron Carroll – Satisfy [2018]仏
Crush Club ft. Supermini – We Dance [2018]米
Friendly Fires – Heaven Let Me In [2018]英
日本のドリフト走行映像が使われたボストン・バンの最新ヒット!
Boston Bun – Better Together [2018]仏
2018年11月にリリース、トロピカル・ハウスの名残りを残したままEDMの分野にディスコを取り入れた斬新なアレンジ! 1976年D.C. LaRueによるディスコソング「Cathedrals」のストリングを使用。
Mike Mago x Dog Collective – Always On My Mind [2018]蘭/スウェーデン
Mike Mago – Always On My Mind サンプリング曲を表示
原曲は1979年Fat Larry’s Bandの有名曲「Hey Pancho It’s Disco」。
Denis Sulta – L&S (You Mean Everything Mix) [2018]英
1981年Lesette Wilsonのアーバン・ディスコ名曲「Caveman Boogie」の2018年ハウストラック!(原曲とあまり変わらないけど) Shakatakのようなフュージョン/クロスオーヴァー好き人間にはたまらないダンストラック、2019年The Black Madonna(ブラック・マドンナ)推し、クラブユースではピッチアップしてのプレイです。
Love Drop – Caveman Boogie [2018]
原曲:Lesette Wilson – Caveman Boogie [1981]米
UKマンチェスターのサイケポップ・バンド、Fuzzy Sun(ファジー・サン)より2018年リリース、2019年 BBC Radio 1 オンエア曲。1983年のイタロディスコ/ユーロビート名曲 Gary Low(ゲイリー・ロウ)の「I Want You」を彷彿させる曲!
Fuzzy Sun – Want Love [2018/2019]英
シティポップ・ブームの代表格、2018年頃から世界で大人気となっている竹内まりやの「プラスティック・ラブ」にパラモア「Ain’t it Fun」、アデル「Set fire to the Rain」、ブロンディ「Heart of glass」のヴォーカルを当てたパーフェクトなマッシュアップ曲! 究極の洋楽ディガーであるヤマタツだからこそ出来た和洋折衷の名曲!
Western Plastic (Paramore, Mariya Takeuchi, Adele, Blondie) – Mashup [2018]
Ain’t it Plastic (Paramore, Mariya Takeuchi) – Mashup
竹内まりや – Plastic Love (Prod. by 山下達郎) [1984]日本
つづく…かも
Part 7までお付き合い下さりありがとうございました。
しばらくの間、クラブミュージック特集(2019年~ )に専念します。ニューディスコ特集だけだと切り捨てる曲が多いため、ハウス・テクノ・インディーダンスの総合的な紹介をスタートします。それらの中からニューディスコ属性のものをこちらにフィードバックしてゆく予定です。
ただし今までサブジャンル扱いだったディスコハウスのヒット数が圧倒的に増えてきているため、従来のニューディスコの概念を適用し続ける必要があるかどうか様子をみたいと思っています。
(*2019年からは各音楽評論もBBCのDJ達も明確に「Disco-House」という用語を使うようになりました。ハイフンは Disco/Houseといった曖昧な表記でなく合成語としての固有名詞であることを明示しています。)
また同時にDua LipaやLady Gagaなどポップソングの分野からノスタルジックなレトロポップ/ディスコポップの一種として初期のニューディスコ調のアレンジを取り込む試みもみられます。
Doja Cat – Say So [2019.11-2020.5]米
Dua Lipa – Don’t Start Now [2019.11]英
プロデューサーの一人 BURNS(バーンズ)によれば、Roger Sanchez「Another Chance」やStardust「Music Sounds Better with You」のようなクラシックヒットをモダンにした曲を作りたかったというグラミー受賞曲「Rain On Me」
Lady Gaga, Ariana Grande – Rain On Me [2020.5]米
Victoria Monét – Experience (with Khalid & SG Lewis) [2020.6]米
Franc Moody – Terra Firma [2019]英 Indie Dance/Electro Pop
Disco-House(ディスコハウス)はディガーの要素が強く掘り出した名曲ディスコソングの断片にリズムトラックを加工したシンプルな構成で、ポップスの体裁を削ぎ落した完全ダンスフロア向けのループトラック型、Nu-Disco(ニューディスコ)はもっと汎用性が高くディスコのアレンジ/サンプリングを加えているもののポップスの体裁を保っているモダンなディスコソングで、共通/重複する部分もあるが方向性は若干異なるという認識です。
DJは曲の発掘とアレンジでDisco-Houseへ、ミュージシャンは作曲能力を活かしてNu-Discoへ、とそれぞれの本分に立ち返った活躍の仕方がやっぱり自然ですよね。
どこまでがNu Discoなのかという課題
古いディスコソングを見つけてリズムトラックと合わせるという作業はハウスミュージックとニューディスコに共通しており、ニューディスコの楽曲の大部分がハウスのサブカテゴリに属しているため、HouseもしくはNu Discoのどちらのタグをつけることも可能な曲が多く存在します。
特にBeatportやJuno、Discogs などでは判断不能のときに、ひとまずシンプルに「Disco」や「House」などと記載するケースが多く、実際にはニューディスコやディスコハウスに当てはまることもよくあります。
またサンプリングを行わず独自に作曲したダンスポップも含まれ、バンド演奏であるか打ち込みであるかの区別もあまり意味を持たなくなってきています。
オンライン店、Beatportが「Nu Disco」というジャンル名誕生のきっかけであったものの、音楽界の権威という訳ではないため、以降のジャンル分けについては各媒体の評論を参考に、自分の耳と解釈で聴き分けるのが良いと思われます。
当コラムでは、埋もれてゆく大半のニューディスコの楽曲よりもメインストリームとの接点を優先し、以下のものを寄せ集めています。(結果的にNu Discoのくくりで一緒にコンパイルされクラブミックスにされてしまう楽曲という点では共通しています。)
- フィルターハウス系の楽曲(サンプリング使用)
- バレアリック系の楽曲(独自作曲/サンプリング使用)
- ディスコハウス系の楽曲(サンプリング使用)
- エレクトロ/ダンス系の楽曲(独自作曲)
- EDM系にディスコが融合している楽曲
- ニューディスコの影響を受けたロックの楽曲
- ニューディスコの影響を受けたR&Bの楽曲
- ニューディスコテイストのリミックス曲