Nu Disco(ニューディスコ)とは – 音楽ジャンル Part 4
2010年~2012年
2010年代に入ってからは、フィルターディスコのように過去の音源をサンプリングしてそのまま曲に使用するのではなく、かつて存在したディスコソングの演奏を解析してオリジナルソングのアレンジに活かすタイプの曲が徐々に増えてきます。
マーク・ロンソンが主張する「新しいサンプリング手法」の時代の始まりです。(皮肉にもロンソンはこれが元で似た曲の作者からの訴訟ラッシュに追い込まれます。元ネタがハッキリしている方がマシなのかもしれません…)
ネットミームになったフレンチ・ディスコ、Baby I’m Yours
Daft Punk、Justiceを発掘した、Ed Bangerレコーズの社長、BUSY Pが次に発掘したアーティスト、ブレイクボットによる2010年のフレンチディスコ・ヒット。1983年 George Duke(ジョージ・デューク)の有名曲「Reach Out」にインスパイアされた曲です。ブルーノ・マーズの大ヒット「Treasure」はこの曲に似ていたため、(言うほど似てるかどうかはともかく)訴訟を避けるためにBreakbot & Irfanがクレジットされることになりました。
またこの曲は様々なタイプのインターネットミームでネタにされた曲としても知られています。
BreakBot feat. Irfane – Baby I’m Yours [2010]仏
BreakBot – Baby I’m Yours 関連曲を表示
世界的ヒット、バーブラ・ストライサンド
Armand Van HeldenとA-Trakのユニット、Duck Sauce(ダック・ソース)が生み出した世界的ヒット。EDMの前段階としてエレクトロハウスが流行した頃に、ガラージ畑のヴァン・ヘルデンがあえてチャラいアレンジで作ったディスコトラック。
Duck Sauce – Barbra Streisand [2010]米/豪
Duck Sauce – Barbra Streisand 原曲を表示
Tensnake – Coma Cat [2010]独
2010年、欧州で最も成功したNu-Discoトラックと言われ、イビザ・アンセムにもなったテンスネイクの「コーマ・キャット」です。原曲はマドンナを売り出したStudio 54のDJ、Jellybean(ジェリービーン)のプロデュース曲!
Avicii and Sebastien Drums – My Feelings For You [2010]スウェーデン/仏
実はレディー・ガガ&アリアナ・グランデの大ヒット「Rain on Me」とネタが同じグウェン・マックレイの「All This Love That I’m Givin’」である姉妹曲!
Boys Noize – Yeah [2010]独 Electro House
後にレディ・ガガ&アリアナ・グランデ「Rain On Me」でグラミー受賞することになるジャーマンテクノ・プロデューサー Boys Noize(ボーイズ・ノイズ)より。
The Phantom’s Revenge – I Can’t Loose [2010]仏
The Phantom’s Revenge – Charlie [2010]仏
フレンチハウス・リヴァイヴァルの火付け役 The Phantom’s Revengeより。
The Phantom’s Revenge – I Can’t Loose 原曲/関連曲を表示
Tom Trago – Use Me Again [2010]蘭 Disco House
Tom Trago – Use Me Again 原曲を表示
Fake Blood – I Think I Like It [2010]英
言わずと知れたナイル・ロジャースの名曲の2010年リミックス盤。
Chic – I Want Your Love (Dimitri From Paris Remix) [2010]米/仏
Bee Gees – You Should Be Dancing (Todd Terje Re-Edit) [2010]ノルウェー
Example – Kickstarts (Produced by Sub Focus) [2010]英 Electro House
ダフト・パンクのGuy-Manuel de Homem-Christoによるプロデュース。血しぶき飛び交うニコラス・ウィンディング・レフンのカルト映画「Drive」オープニング曲。エンディング曲「A Real Hero」と合わせてSynthwave(シンセウェイヴ)のカテゴリにも入ります。
Kavinsky – Nightcall [2010]仏 Nu Disco/Electro/Synth-pop
Benny Benassi ft. Gary Go – Cinema [2011]伊 Electro House
Benny Benassi – Satisfaction | The Making Of A Dance Classic
Lovebirds – Want You In My Soul ft. Stee Downes [2011]独 Deep House / Nu-Disco
Calvin Harris – Bounce ft. Kelis [2011]米 Electro House
Todd Terje – Inspector Norse [2012]ノルウェー
Lindstrøm(リンドストローム)の弟子であり北欧のCosmic Disco(コズミック・ディスコ)と称されるノルウェーのトッド・テリエより。
Madeon – Icarus [2012]仏
アレンジのせいでEDM系アーティストとみなされる事の多いマデオンですが、フレンチエレクトロの発展形であって本質的にはフレンチディスコの系譜にあるミュージシャンです。
カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したフランスのLGBT映画『アデル、ブルーは熱い色』挿入歌。
Lykke Li – I Follow Rivers (The Magician Remix) [2012]スウェーデン/ベルギー
本人は嫌がっていますがNu Discoに分類される、Moon Boots(ムーン・ブーツ)の人気曲。原曲は1993年ジャネット・ジャクソンの「If」。
Moon Boots – Sugar [2012]米
Daft Punk(ダフト・パンク)のThomas Bangalter(トーマ・バンガルテル)がこっそりリリースしたソロ曲。
Thomas Bangalter – Club Soda [2012]仏
Ditongo – Atalaya [2012]伊
「Groovejet」を大ヒットさせたイタリアンDJ、Spiller(スピラー)の匿名プロジェクトDitongoより。
イタリアのBottin(ボッティン)より、1980年のフレンチ・ディスコをリメイクしたディスコハウス/ニューディスコ。
Bottin feat. Jupiter – Sage Comme Une Image (Club Mix) [2012]伊
Bottin – Sage Comme Une Image 原曲を表示
2013年
2013年にはいくつかのディスコ/ファンクの曲がチャートインしましたが今回はもっと70年代色が強く、70年代後半以降ポップチャートのダンスソングが他のどのポイントよりも多いと述べた情報筋もありました。
2013年の最大のディスコ・ハウスヒットは、ダフト・パンク feat. ナイル・ロジャースの「Get Lucky」でした。この曲は、当初、夏の最大ヒットの有力候補と考えられていましたが、別のディスコスタイルの曲、ロビン・シック「Blurred Lines」の5週間後にピークとなり、Builboard Hot100で12週連続1位となり、夏の最終曲そのものになりました。
Daft Punk – Get Lucky ft. Pharrell Williams, Nile Rodgers [2013]仏・米
2013年にダフト・パンクは多くのディスコリバイバル曲にクレジットされましたが、彼らの典型的なフレンチ・ディスコの楽曲とはかけ離れており、本来のディスコミュージックの楽曲スタイルとすら異なると指摘される事もありました。
しかしジョルジオ・モロダーやナイル・ロジャース等のレジェンドとのコラボレーションにおいて、ディスコとは(過去に)耳にしてきた音楽の事とは限らず観念的なものである、と捉えられるようになったのでした。
Skream – Rollercoaster ft. Sam Frank [2013]英
UKダブステップのパイオニア Skream(スクリーム)が垣根を超えて放ったニューディスコの傑作、クラブバンガー!
Hot Natured – Benediction [2012-2014]英/米
Jamie Jones、Ali Love らによる英米合同ユニット Hot Natured(ホット・ネイチャード)の傑作シングル、イビザ・アンセム!
一時期のBBCではオリジナルVer.を凌ぐほどオンエアされていた、Lxuryによる原型をとどめないほど大胆な傑作リメイク!(というか、もはや全く別の曲)
Hot Natured – Benediction (Lxury Remix) [2014]英/米
Satin Jackets – You Make Me Feel Good [2013]独
Tropical House(トロピカルハウス)とNu Disco(ニューディスコ)の中間的なテイストの曲。Beatportはニューディスコ扱い。
2014年~2015年
重鎮アーサー・ベイカーの2014年ヒット、No Price
アフリカ・バンバータとの歴史的名作「Planet Rock」をはじめヒップホップやフリースタイルなど打ち込み系ダンスミュージックのパイオニアとして80年代前半に活躍した大御所プロデューサー Arthur Baker(アーサー・ベイカー)が、1979年に制作した未発表曲をSlam Dunk’d(スラム・ダンクド)名義で35年越しに完成させたディスコハウス型のキラーチューン! カナダのクローメオ(Chromeo)との共作。
Slam Dunk’d feat. Chromeo & Al-P – No Price [2014]米/加
Michael Jackson – Love Never Felt So Good [2014]米
31年間お蔵入りとなっていたポール・アンカとの共作による名曲!
Jungle – Busy Earnin [2014]英
ノエル・ギャラガー、ジャミロクワイ、ジャスティン・ティンバーレイクら大物ミュージシャンが大絶賛する、UKロンドンのネオソウル・バンド/エレクトリックポップ・デュオ、Jungle(ジャングル)による2014年ヒット。
Todd Terje – Delorean Dynamite [2014]ノルウェー
Lindstrøm(リンドストローム)の弟子、トッド・テリエによるSpace Disco(スペース・ディスコ)調のヒット曲「デロリアン・ダイナマイト」。タイトルにも方向性が表れていますね。
イビザ・アンセム「Coma Cat」でも知られるTensnake(テンスネイク)のヒット曲。EA Sportsのサッカーゲーム「FIFA 15」のサウンドトラックにも収録されています。
Tensnake feat. Thabo – Pressure [2014]独
Breach – The Key feat. Kelis [2014]英
Foster The People – Best Friend [2014]米
リミックス版よりもオリジナルの方が断然ディスコっぽくフロアを盛り上げてくれるフォスター・ザ・ピープルのキラーチューン。かつてのロッキンディスコ/ディスコロック的ニュアンスの曲です。
ディープハウスと呼ぶに遠くニューディスコ的な軽さのあるBakermat(ベイカーマット)のヴォーカルハウス・ヒット
Bakermat – Teach Me [2014]蘭
よくぞこの埋もれた名曲を発掘してくれました!「Wild Child – Renegade Master」のリメイク版「The Renegade」をヒットさせハウス用サウンド素材集もリリースしているUKのリミキサー/DJ、Friend Within(フレンド・ウィズイン)ことリー・モーティマーによる1981年 Brenda Russell(ブレンダ・ラッセル)作曲のレア・グルーヴ「Donna Washington – Going for the Glow」のリエディット曲。
Donna Washington – Going for the Glow (Friend Within Rework) [2014]米/英
Tuxedo – Do It [2014]米
Tuxedo – The Right Time [2015]米
JunoとBeatportでNu DiscoなのかSoul/Funkなのか見解が分かれるところですが重要曲なのでリストイン!Mayer Hawthorne(メイヤー・ホーソーン)率いるTuxedo(タキシード)の代表曲とChic(ナイル・ロジャース)風のストリング使いが印象的なヒット曲。
Armand Van HeldenとA-Trakのユニット、Duck Sauce(ダック・ソース)より、ヴァン・ヘルデンがあえてチャラくアレンジしたニューディスコ・トラック。
DUCK SAUCE – NRG [2014]米/加
Harvey Sutherland – Bermuda [2015]豪
Julio Bashmore – Holding On feat. Sam Dew [2015]英
イビザ・アンセム「Au Seve」でも知られるUKのハウスDJ/音楽プロデューサー、フリオ・バッシュモアのヒット曲。パトリック・アダムスが作曲、ラリー・レヴァンがMixを担当したSalsoul レーベルのフィリーソウル有名曲「Inner Life feat. Jocelyn Brown – Make It Last Forever」からのサンプリングです。バッシュモア+父ちゃん母ちゃん+友達+地元の皆様の出演で撮影した手作りPVが和みます。
Julio Bashmore – Holding On 原曲を表示
1977年First Choice「Let No Man Put Asunder」のベースラインだけで突っ走るパープル・ディスコ・マシーンの出世作。
Purple Disco Machine – Yo [2015]独
Purple Disco Machine – Yo 関連曲を表示
Atlus (Denis Sulta) – Gum [2015]英
Shamir – Call It Off [2015]米 Indie Dance/Nu Disco/Electro House
2015年はインディーダンス扱いの曲も含めてディスコの影響を受けたロックソングが多くリリースされた年でした。リミックス版がNu Discoカテゴリとなったりしますがここでは原曲を挙げます。
Coldplay – Adventure Of A Lifetime [2015]英
Tame Impala – Let It Happen [2015]豪
Unknown Mortal Orchestra – Can’t Keep Checking My Phone [2015]NZ
Part 5に続く