Nu Disco(ニューディスコ)とは – 音楽ジャンル Part 1

公開日:  最終更新日:2024/08/21

 

意味



表記:Nu-Disco、Nu Disco
(NewでなくNuを使ったりハイフンを足したりするのは固有名詞化のため)

類語:Disco House(ディスコ・ハウス)、Electro Disco(エレクトロ・ディスコ)、Edit House(エディット・ハウス)

Nu-Disco(ニュー・ディスコ)とは70年代~80年代のUSディスコ、80年代初期のイタロダンス、フレンチ・ハウスそしてその他のシンセを多用したヨーロピアン・ダンスミュージックへの再注目と関連した、21世紀のダンスミュージック・ジャンルを指します。

オンラインミュージック店との関わり

このジャンルは特に2000年代中盤に人気となり、また2010年代中盤にも小規模な再復活のブームが起こりました。”ニュー・ディスコ”という呼び名は2002年の初期と2008年の中期において、Juno(ジュノ)やBeatport(ビートポート)のようなオンラインミュージック店で使用されたものでした。

元々、彼らはこのジャンルをクラシック・ディスコのレコードのRe-Edit(リエディット)曲や、このスタイルの楽曲を作った一握りのヨーロッパのエレクトロニック・プロデューサー達と関連付けていました。ニュー・ディスコという名称は、新しいディスコソングを指すのとは別に、エレクトロクラッシュフレンチ・ハウスと関連するアメリカのレーベルを解説するためにBeatport(ビートポート)で使われていた言葉でもありました。

(※エレクトロクラッシュ:80年代ニュー・ウェイヴ、ポストパンク、エレクトロ、ディスコ等を元に再構築を行った音楽ジャンル)

起源と定義

●Discogs

Discogs:Nu-Disco(ニュー・ディスコ) 楽曲の説明

音楽データベースDiscogs(ディスコグス)によれば、その起源はハウスアーティストがよりレトロなサウンドのためにあからさまなディスコのサンプルとスタイルを取り入れ始めた1990年代半ば ※までさかのぼります。

オリジナル時代のディスコトラックブギートラックを(場合によってはエフェクトを追加して)単に再編集しただけの曲もNu-Disco と呼ばれる事があります。

いくつかのNu-Discoは、スローダウンした「スローモーション」/「コズミック」スタイルです。また高速でハードなものも含み、エレクトロ、エレクトロクラッシュ、ディスコ、ハウスとの類似性に応じて、「エレクトロディスコ」「エレクトロハウス」という風に、より正確に説明することもできます。

※ 1990年代半ばにおいてNuphonic Records はNu-Disco のパイオニアと見なされている英国のアーティスト Idjut Boys、Faze Action、Raj Gupta、Crispin J Glover のためのハウスレーベルでした。(”Encyclopedia of Popular Music” by Colin Larkin)

●The Independent

2002年には、インディペンデント誌がNu-Discoを70年代ディスコファンクに現代のテクノロジーと繊細な楽曲制作を適用した結果、誕生した音楽と評しました。

●Beatport

そして2008年にはBeatport(ビートポート)がNu-Discoを70年代と80年代初期の(エレクトロ)ディスコブギーコズミックバレアリックイタロディスコの延長線上にある音楽と記載しました。

●SPIN

同年にSPINマガジンはインストゥルメンタルのSpace Disco(スペース・ディスコ)や70年代後半~80年代前半のItalo Disco(イタロ・ディスコ)を含むユーロディスコ・サウンドがNu-Discoに大きく影響していると指摘しました。

●ディスコ旧譜のRemix Version

2015年の時点でBeatport(ビートポート)や Traxsource(トラックスソース)のようなオンラインミュージック店では、旧譜のリミックスディスコエディットが、オリジナルの楽曲と並んで販売されています。

 

備考

具体的には1997年~2002年の期間で完成していたフレンチ・ハウス/フィルター・ハウス/バレアリック・ビートとそれらを継承した楽曲、さらに70s後半~80sディスコをアレンジした楽曲を加えたユーロディスコの集合体を指しています(ただし原曲の多くは米国製)。Nu Discoという大きな括りでまとめる事により国籍や特定のクラブカルチャーから離れ、一般的に理解されやすくなっただけであると解釈して差支えないでしょう。

画像はDaft Punk(ダフト・パンク)のThomas Bangalter(トーマ・バンガルテル)が1997年に手掛けた Stardust(スターダスト)の「Music Sounds Better With You」。当時はフレンチハウス・アンセムの扱いでしたが、現在はニューディスコ・アンセムとも呼ばれる曲です。

関連:Filter Disco(フィルター・ディスコ)

別名:Filter House(フィルター・ハウス)・French Touch(フレンチ・タッチ)・tekfunk(テックファンク)

Classic Techniques: The Filtered Disco Loop

ディスコミュージックの断片にAudio Filter(オーデイオ・フィルター:帯域カット)と Phaser(フェイザー:位相シフト=ジェット)を組み合わせたサウンドエフェクト=すなわち Filter Effect(フィルター・エフェクト)をかけてループさせ、それにリズムトラックを組み合わせて制作されたハウスミュージックの一種。

ディスコのサンプリング音が歪んだりこもったりしながら、うねるように聞こえるのが特徴です。(動画の中でも Hypnotizing Vibe と表現されています。)

フレンチ・ハウスのジャンルから生まれた手法で、Daft Punk(ダフト・パンク)の曲もこのカテゴリに入ります。90年代半ばからの初期のNu Discoを構成する重要な要素の一つであり、2022年現在のディスコハウスでも現役で活用されています。

 

Nu-Disco以前

LF Systemに代表される現世代のDJ達が平然とプレイしはじめたディスコハウス・クラシックの一部です。

80s Disco-House(ディスコハウス)

80sディスコハウスのパイオニア Mark Moore(マーク・ムーア)とBomb The Bassの「Beat Dis」等を手掛けたPascal Gabriel(パスカル・ガブリエル)によるプロジェクト。当時の流行サウンドからは独立したヒット曲でディスコブームは到来せず。原曲は1979年Rose Royceの「Is It Love You’re After」。ヴォーカルは後にDr. Dreプロデュースで人気となるLAのR&BシンガーMichel’le(ミシェレー)が担当。

S’Express – Theme From S’Express [1988]英

Theme From S’Express 原曲を表示

 

90s Disco-House(ディスコハウス)

Masters At Workのケニー・ドープによるイビザ・アンセム。原曲はブラスロック・バンドChicago(シカゴ)がDavid Fosterと関わってブラスセクションを捨ててしまう以前、頭デッカチなロック評論家から酷評されたディスコ時代の1979年「Street Player」。「Hard to Say I’m Sorry(素直になれなくて)」よりもこちらの方が後世に残るとは皮肉な結果です。

Kenny “Dope” Presents The Bucketheads – The Bomb! [1994]米

The Bucketheads – The Bomb! 原曲を表示

 

芝浦GOLDでプレイされていた頃のディスコハウス原型、ウィーン拠点のテクノ/ハウスDJ、Giant WheelことClemens Neufeld(クリーメンス・ノイフェルド)の有名曲/ピークタイムトラック。原曲は1981年The Brothers Johnsonの「The Real Thing」。NYのガラージハウス専門レーベル Strictly Rhythmより。

Giant Wheel – Retrash [1995]オーストリア

Giant Wheel – Retrash 原曲を表示

 

ダン・ハートマンの特大ネタ「リライト・マイ・ファイア」にヒップハウスを組み合わせたヒット曲。

Souvlaki (Mark Summers) – Inferno [1996]英

Souvlaki – Inferno 原曲を表示

 

EW&F「Boogie Wonderland」の大ネタ使い!ロンドンの音楽プロデューサー/DJデュオ、Stretch & Vern(ストレッチ&ヴァーン)1996年リリース曲。

Stretch & Vern – I’m Alive [1996]英

Stretch & Vern – I’m Alive 原曲を表示

 

90年代後半にスタンプ刻印のみ入ったインディー作品を残したUKワイト島出身のテクノDJ/プロデューサー Schatrax(シャトラックス)ことJosh Brentより。 

Schatrax – Sunshine [1996]英

 

Nu-Discoの代表曲・関連曲

90年代後半~2000年

Eden [2015]仏

Daft Punk、Dimitri From Paris、Cassiusなどが活躍したフレンチ・タッチ黎明期を描いたフランス映画!

フレンチハウス・ブームの原点、Around The World

Daft Punk – Around The World [1996]仏

Daft Punk – One More Time [2000]仏

フィルター適用前のフレンチ・タッチの祖、Hear The Music

ダフト・パンクがヘビープレイし、フレンチハウス・ブームの火付け役となったと言われる故ポール・ジョンソン(2021年8月4日コロナで他界)の名曲。現在もなおダフト・パンク作品の底流にあるブギー・サウンドです。1980年の原曲と合わせて。

Paul Johnson – Hear The Music [1996]米 Chicago

Paul Johnson – Hear The Music 原曲を表示

 

初期フレンチタッチ/フィルターハウスの代表曲、原曲は1977年Brass Constructionの「Happy People」。

Cheek ‎- Venus (Sunshine People) [1996]仏

 

フレンチハウス/フィルターハウス/ニューディスコ アンセム
Stardust – Music Sounds Better With You

97年にわずか1曲だけをリリースして解散したワンオフ企画ユニット、スターダストのこのヒット曲が、ちょうどフレンチ・ハウス(フレンチ・ディスコ)とNu Discoの境界線上にある曲です。1998年夏のイビザを席捲したクラブ・スマッシュ! 史上最高のダンスミュージックの1つに数えられ、ハウスミュージックの主導権を欧州勢が握った象徴的な曲でもあります。

Stardust – Music Sounds Better With You [1997]仏

Stardust – Music Sounds Better With You サンプリング曲を表示

 

Armand Van Helden – You Don’t Know Me

90年代後半、誕生より10年を迎えたハウス・テクノの退屈なまでに行き過ぎたミニマル化もしくはソウルミュージック化(つまり洗練はされたが燃料切れを起こし単調になっていた)への反動として、ダンスミュージックのメインストリームがビッグ・ビートやワープハウス、ニューディスコ等へ移行しはじめた頃、ダフトパンクと並び時代のキーマンであったアーマンド・ヴァン・ヘルデンのこのヒット曲が、ちょうどガラージ・ハウス(ディープ・ハウス)とNu Discoの境界線上にある曲です。

普通のガラージよりもドカスカ聞こえるのはヴァン・ヘルデンがSpeed Garage(スピード・ガラージ)に採用する事となったダッチテクノ名作 Plastic Dreams(1992) のリズムトラックを重ねているからです。米国もフィルターディスコの手法を使い始めたという一例。

Armand Van Helden – You Don’t Know Me [1998]米

Armand Van Helden – You Don’t Know Me 原曲を表示

 

Phats & Small – Turn Around

こちらは英国のStardustフォロワーで、フィルターハウスの典型例です。原曲は1980年イタリアの「Change – Glow Of Love」。Smallさんは後にFreemasons(フリーメイソンズ)としても活躍します。

Phats & Small – Turn Around [1998]英

Cassius – Cassius 1999 [1998]仏

原曲は1982年ドナ・サマーの「(If It) Hurts Just a Little」。

Wamdue Project – King of My Castle [1998]米

Bob Sinclar – Gym tonic (prod. by Thomas Bangalter) [1998]仏

バレアリックの代表曲、Moloko(モロコ)の Sing It Back

「時計じかけのオレンジ」に登場する麻薬入りミルクから命名したエレクトロポップ/ダンスポップ・デュオ、モロコの名曲。イビザのバレアリック・カルチャーを意識した妖艶で退廃的なPVに仕上がっています。2021年にはファストファッションブランドH&Mのコマーシャルにも使用されました。

Moloko – Sing It Back [1998]英

Madison Avenue – Don’t Call Me Baby

フィリーディスコ/イタロディスコを継承したNu Discoの有名曲!
Madison Avenue – Don’t Call Me Baby [1999]豪

Madison Avenue – Don’t Call Me Baby 原曲を表示

 

Triple X – Feel The Same [1999]伊

UKソウルバンド Delegation(デレゲーション)1979年の名曲「You and I」を使用したイタリア発のディスコハウス・アンセム!

Triple X – Feel The Same 原曲を表示

 

Bob Marley Vs Funkstar De Luxe – Sun Is Shining (De Luxe Edit) [1999]デンマーク

Ministers De-La-Funk feat. Jocelyn Brown – Believe [1999]米

Erick Morillo、Harry “Choo Choo” Romero、DJ Sneak(Carlos Sosa)からなるユニットのヒット曲。

Pete Heller – Big Love [1999]英

Pete Heller – Big Love 原曲を表示

 

The Ones – Flawless [1999]米

Les Rythmes Digitales – Jaques Your Body (Make Me Sweat) [1999]仏/英


ATFC feat. Lisa Millett – Bad Habit [1999]英

ビッグビート陣からも1曲。原曲は1980年Locksmithの「Far Beyond」。

Basement Jaxx ‎– Red Alert [1999]英

Basement Jaxx ‎– Red Alert 原曲を表示

 

Demon vs. Heartbreaker ‎– You Are My High [1999]仏

You Are My High 原曲を表示

 

原曲はダンクラの名曲 Ray Paker Jr. & Raydioの「It’s Time To Party Now」

DJ 88 KEYS – Everybody Up [1999]独

Bob Sinclar – I Feel For You [2000]仏

ストリングスのサンプルは、MVの劇中でも扮装されている1978年フレンチディスコのパイオニア Cerrone(セローン)の「Look for Love」。

Bob Sinclar – I Feel For You 原曲を表示

 

フレンチハウスのアンセム、Modjo(モジョ)のLady

UKチャートNo.1、2000年の夏にはヨーロッパで最も多くオンエアされ、世界の誰もが平均9回は聴いたと言われるヒット曲。

Modjo – Lady (Hear Me Tonight) [2000]仏

Modjo – Lady 原曲を表示

 

Stuntmasterz – The Lady Boy Is Mine [2000]英

Modjoの「Lady」とBrandy & Monicaの「The Boy Is Mine」とのマッシュアップ曲!

Spiller – Groovejet (If This Ain’t Love) [2000]伊

Spiller – Groovejet (If This Ain’t Love) | The Making Of A Dance Classic

Spiller – Groovejet 原曲を表示

 

原曲は1979年フランスの「Sheila & B. Devotion ‎– Spacer」。

Alcazar – Crying At The Discoteque [2000]スウェーデン

Alcazar – Crying At The Discoteque 原曲を表示

 

原曲は1978年フランスの「Jo Bisso – The Mistery With Me」。

Bel Amour feat. Sidney ‎– Bel Amour [2000]仏

Bel Amour 原曲を表示

 

Alan Braxe & Fred Falke – Intro [2000]仏

1985年のJets(ジェッツ)のヒット曲「Crush on You」の間奏部を使い、Daft Punkと同様のディスコ・ベースラインを持つクラシックなフレンチ・ハウス。

Alan Braxe & Fred Falke – Intro 原曲を表示

 

Milk & Sugar – Higher & Higher [2000]独

Funky House(ファンキーハウス)ヒット「Let The Sun Shine In」で知られるプロデューサーデュオ。

Moca (David Morales & Albert Cabrera) feat. Deanna – Higher [2000]米

モラレス親父とThe Latin Rascalsのアルバート・カブレラによるプロジェクト。

Ann Nesby – Lovin’ Is Really My Game [2000]

原曲は1977年Brainstormの「Lovin’ Is Really My Game」。

 

Part 2に続く

 

 

 

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